【Iconoclasts】たった1人で7年掛けて作られた2Dアクション大作 帰ってきたガレリアPCゲーム探訪記

公開日:2020/6/9


でっかいレンチを持ったヒロインと、レトロゲームのような可愛らしいドット絵。そんな初印象をある意味では裏切らず、ある意味では最大限に裏切るのが本作『Iconoclasts』だ。
なにしろタイトルの「Iconoclasts」とは英和辞書を引くと「聖像破壊者」「因習打破主義者」と物騒な意味が書いてある。とんでもない思い入れが込められていることが伝わってくるのだ。

実は本作は、1人のインディー製作者が7年も掛けた超大作だったりする。「Noitu Love2」でも知られるヨアキム・サンドバーグ氏がドット絵からサウンドまで全て自ら手がけ、たった1人で作り上げたタイトルなのである。

主人公は、メカニックになって人助けをしたいと願う少女のロビン。しかし、この世界ではエネルギー資源「アイボリー」が不足しているために機械の扱いは管理が厳しく、壊れた機械を許可なく整備することも重い罪とされる。そしてロビンが1本のレンチを拾ってから、世界はおかしくなってしまった……。

主人公のロビンは1本のレンチを拾ったことから、やがて世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれる。まさにボルトから運命まで回してしまうレンチだ。

そしてロビンが1本のレンチを拾ってから、全てがおかしくなってしまった。弱者には理不尽な聖罰が下される残酷な現実を前に、違法メカニックのロビンは世界の真実に迫る旅に出る……まるで「ロックマン」を思わせるコミカルな見かけなのに、ゲーム開始数分でヘビー極まる展開に放り出されるわけだ。

恐るべきドットの描き込みと情報料の膨大さ

本作はいわゆるプラットフォーム・アクションアドベンチャー。キャラクターをジャンプさせて足場から足場に飛び移ったり、障害物を飛び越えたり除去したりして先に進む「スーパーマリオ」型のアクションで、あちこちを探索する(アドベンチャー)ゲームだ。体力制であり高いところから落ちたりトゲに当たっても即死しないため、基本的には「探索」に重きが置かれている。

しかし舞台となるプラットフォーム、すなわちドットグラフィックによる背景の描き込みがすさまじい。宗教に支配されていることを表すように特殊な印が随所に埋め込まれ、圧政に苦しんでいる人々の集落は本当に建物が壊れて朽ち果てており、教会の中に入れば礼拝施設もあったりする。作者のサンドバーグ氏が1人で作り上げたからこその世界観がドットに込められているのだ。

「ワン・コンサーン」の圧政に苦しめられる人々の集落。地球とは異なる惑星の植生や、物資不足のために修復できない建物といった世界背景がドットで語られ尽くしている。
 

およそ森や洞窟などを除いて、それぞれの町や村、基地ごとに専用のグラフィックが用意されており、使い回しはほとんどない。そもそもファミコン時代のドット絵は、ROMカートリッジ容量の小ささのため「いかに同じドット絵を上手く使い回すか」「色を変えたり組み合わせを替えて違うものに見せるか」がゲーム職人の腕の見せどころだった。現代のPCゲームなりPS4など家庭用ゲーム機ではそんな制約もなく、いくらでも好きなだけ作り込めるわけだが、「本当にやってしまったのか」と唖然とするほどだ。

しかも、そこで活躍するキャラクターたちには、1人残らず作者の愛と手間が込められている。元気いっぱいの相棒のミナやロビンの兄エルロ、人は良いがやることなすこと裏目に出る超能力者ロイヤル、怒れるエージェントであり強敵のブラック。それぞれが身ぶり手ぶりのパターンをいちいち用意されており、小さなドット絵ながらもお芝居を観ているかのよう。特に主人公のロビンは一言もセリフがないのに、「怒ったぞー!」という仕草(たぶん1回しか使われない)などでしゃべる声が聞こえてくる気がする表現力のスゴさだ。

ロビンの相棒・ミナが故郷に帰ってきたときの一幕。娘に置いていかれた母親が切ない想いを語る愁嘆場が突如として繰り広げられる……。

すでにお腹いっぱいなのだが、彼らは世界観に基づいた宗教なり信念を持っており、それらが長ゼリフで語られる。ミナが「タネはあの世に行ったご先祖様からの贈り物なの。あたしたちは感謝のしるしとして丸い葉っぱで家を飾るんだよ」と演説しだしたときには、何を言ってるのか分からなかった……。

が、つまり彼らは「人間プレイヤーに分かりやすく説明するのではなく、この世界に生きる人間として振舞っている」ということ。キャラクターの感情によって文字が大きくなったり震えたりする演出もあり、ここまで徹底的に「作者にとっての大事なこと」を盛り込めるのがインディータイトルならではだ。

軽快なアクションと歯ごたえあるパズルの謎解き

本作の魅力は、なんといってもアクションの手触りが心地良いことだ。細かく作り込まれたドット絵のパターンが、手や指の入力にすいすいと追随する操作性がクセになるほど。

主人公ロビンの主な攻撃は、様々な特殊弾に切り替えられるスタンガン(ビームにしか見えないが)にでっかいレンチの振り回し、そしてマリオのような踏みつけの3つ。ショットは軽めにホーミングがかかっていて敵に当たりやすく、ボタン押しっぱなしのタメ撃ちを放てばズガン!という音と派手なエフェクトあり。

そして特筆すべきはレンチの多彩ぶり。近くの敵をぶん殴り、手元で振り回せば敵弾をはじき返してコン!と金属音がしてカウンター攻撃にもなる。さらに空中のボルトにつかまって2段ジャンプをしたり、連続で回転させて発電してからスイッチに充電したり、レールにつかまって高速移動したりと応用の幅は果てしなく広がる。その使いこなしこそが、ゲームの難易度を大きく左右するのだ。

新たな装備が手に入ると、「ロックマン」ばりに喜びの演出が挿入される。つまり「これを使ってギミックを解け」ということで、さらに頭を使うことになる。

先に本作はアドベンチャー、すなわち「探索」と言ったが、ジャンプは少し引っかかれば端っこをつかんでくれるし、空中の足場をギリギリのタイミングで渡り歩くことを求められたりもしない。ただ「先へ進む」だけであれば易しめと言えるだろう。

むしろ本題は、数々のパズル的な仕掛けを解くことにある。たとえばボルトを回してからドアを開けておき、別のボルトに飛びついて開いている間にジャンプでくぐり抜ける程度は序の口だ。

まず帯電しておき、爆弾をタメ撃ちしてすき間の向こう側のスイッチをオンにする。あるいは一見して脱出ルートが見つからない行き止まりでも「ユザーパーショット」で敵や物体と自分の位置を入れ替えて道を切り開く。新たな装備が手に入れば、それをフル活用しなければ切り抜けられない新たなパズルが立ち塞がる。


新たなステージには、新たな謎あり。このギミックを動かしてから次にこちらを……と考えているときに敵に邪魔されるとキレそうなことも。

先に進むにつれて合わせ技が必要となり、頭をひねって謎解きを考え、それをスムーズに実行するためにはアクションの腕前も磨かねばならず、ひいては戦いにも活かされる。そのくり返しを通じてゲームも上達していき、知恵とワザとで困難を乗り越えたときの達成感もひとしおなのである。

ギミックを活かして戦うボス戦の楽しさ

そうしたギミック満載の道中を進めていった先には、アクションゲームお約束のボス達が待ち受けている。その総勢は20体以上で、巨大なメカや巨大生物、あるいは等身大だが恐るべき力を振るう特殊能力者などバリエーション豊か。オリジナリティにあふれながら、かつての2D名作アクションゲームで見覚えのある懐かしさもあり、「ファミコン時代の夢の続き」を目の当たりにしたような嬉しい気分になる。

純粋にアクションの腕前勝負になるものもあれば、「ゼルダの伝説」のようにステージのギミックを活かさなければダメージ1つ入らないようなボスもあり。透明化して忍び寄るため、こちらも草むらにしゃがんで気配を消し、後ろから近づいてレンチで殴る……といった攻略を、10回ぐらいゲームオーバーになってからやっと分かったボスもいました。

下から迫り来る巨大ボスからシャッターを開けて逃げつつ、上からボムを落として攻撃する。こういうステージが『メタルスラッグ』にもあったような。

相棒のミナも「もう1人の主人公」として操作するシーンが少なくはなく、時にたった1人で強敵に立ち向かうこともあれば、ロビンと交替しながらボスを追い詰めるコンビプレイもあり。しかし劇中で、初対面の人に会うたび臭い臭い(臭いで居場所がバレたことも)と言われるのが可哀想になってきますね……。

ともあれゲームバランスは歯ごたえはあるものの難しすぎず、遊んで楽しいさじ加減に調整されている。さらには3段階の難易度も用意されており、「リラックス」モードではダメージを受けることがないため、ギミックの謎を解くことに専念できる親切設計だ。

ゲームクリアは「始まり」に過ぎない

あまりに濃厚なストーリーと複雑な宗教観のために途中で脳がパンクしそうな局面があるものの、終盤にかけての盛り上がりやジェットコースター的な展開はすさまじいものがある。

可愛らしいドット絵のはずが人体が爆発するわ腕は引きちぎられるわ(3DだったらPS4やスイッチへの移植は無理だった?)かと思えば厳しい雪山やおごそかな神殿に息を飲み、そして宇宙に飛び出し愛着の湧いたキャラクターにとんでもないことが起こったりと、最後まで目が離せないことばかりだ。

1周クリアした後でも、お楽しみはこれから。10数時間もプレイしたというのに、宝箱など開放した要素はたったの30%だと……。序盤で見かけた「そういえば怪しげな場所が」というところが、後に入手した装備で行けるようになっているため、クリアは「始まり」に過ぎないのである。

Reported by 多根 清史

steam公式サイト

Steam:Iconoclasts


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