【Her Story】圧倒的な没入感を得られる推理アドベンチャー

公開日:2020/8/20

今回ご紹介する『Her Story』は、全編が実写映像で構成された推理アドベンチャーゲームだ。綿密に組み立てられたシナリオとその魅力を際立たせるシステムで、唯一無二のプレイ体験を提供してくれる。

 

少しずつ着実に真相に近づいていく高揚感を味わいながら、ぜひHer Story=「彼女の物語」にどっぷりと浸ってみてほしい。

 

データベースを検索して、ある女性への取り調べ映像を確認していく

本作のシステムは極めてシンプルだ。プレイヤーの行う主な操作は2つ。単語を入力してデータベースを検索し、ヒットした取り調べ映像を確認すること。推理アドベンチャーながら、証拠集めやシナリオ分岐といった要素は一切含まれていない。

 

ゲームがはじまると、ブラウン管モニターを模した画面に検索ボックスが表示される。そこには「殺人」という単語が打ち込まれており、検索すると「殺人」に関連する取り調べ映像がヒットする。デスクトップにある説明書によると、警察が過去の取り調べ映像をデータベース化したものらしい。

 

現段階では事件の概要すらわからないので、まずは「殺人」でヒットした映像を確認して情報を得ることにしよう。

 

取り調べ映像の検索画面。取り調べの中で「殺人」という単語が出てくる映像が3つヒットした。

 

3つの映像からは、この取り調べはある殺人事件に関するものだということ、取り調べを受けている女性は事件の重要参考人であることが推察できる。

 

一つひとつの映像からは断片的な情報しか得られない。気になった情報はメモしておくと良いだろう。

 

その他に見逃せないのが、映像が記録された日時と女性の服装がそれぞれ異なっている点だ。どうやら取り調べは何日にもわたって行われていたようである。データベースには232件の映像が保管されており、そのすべてをチェックするのはなかなか骨が折れそうだ。

 

余談ではあるがイギリス生まれの本作は、字幕・インターフェースなど音声以外のすべてが日本語化されている。翻訳の精度はかなり高く、クリアするまでに一度も違和感を覚えることがないレベル。言葉が重要なゲームシステムということもあるため、英語がわからなくてもまったく不自由しないのは嬉しいところだ。

 

キーワードを連想して物語の核心へと近づいていこう

さて、漠然としたテーマがわかったところで、本作のチュートリアルは終了だ。ここから先はプレイヤー自身が観察力や推理力を駆使して、山積している謎を解き明かしていくことになる。これまでに掴んだ手がかりをもとにして、さらなる手がかりを探していこう。

 

例えば先ほどの画像で女性が「サイモンの殺人となんの関係が?」と発言していることから、殺された人物の名前が「サイモン」であることがわかる。そこで今度は、「サイモン」という単語でアーカイブを検索してみると……。

 

「サイモン」の検索結果。たくさんの映像がヒットしても確認できるのは5つまでに制限されている。

 

なんと関連する映像が52件もヒットした。「これだけあればたくさんの情報が……」と心躍りそうになるが、ここで残念なお知らせがある。このデータベースではなんとも不親切なことに、1回の検索ごとに確認できる映像が5つまでに制限されているのだ。

 

また映像がヒットしたからといって、その映像から得られる情報が必ずしも有用だとは限らない。中には雑談のような、本筋と関連の無い映像が含まれている場合もある。

 

そのため物語の核心に近づくためには、重要な意味を持つ「キーワード」をいくつも見つけ出す必要がある。人物名や地名など映像の中に出てくる単語を注意深くチェックして、片端から検索ボックスに打ち込んでいこう。

 

ところで、ある単語がキーワードなのか否かは、なにを基準にして判断すれば良いのだろうか。「どの映像が物語を読み解くうえで重要なのかを判断する」と言い換えることもできる。重要な映像にはそれとわかるような印がついているのだろうか? 重要な手かがりを得るたびにアーカイブが更新されていくのだろうか?

 

答えはどちらもノーだ。どの情報が重要でどの情報が重要でないのかは、自身の推理をもとに判断していくしかない。一度は重要に思えた情報が後から無価値だと判明することもあれば、女性の他愛無い発言の中にキーワードが含まれていることもあるだろう。

 

すべての映像や単語が重要だとは限らない。情報の取捨選択を心がけたいところだ。

 

時には、得られた情報からキーワードを連想しなければならない場合もある。これはあくまで一例だが、物語の中に「餌」「トイレシート」「爪とぎ」という単語が出てきたのであれば、そのまま検索するのではなく「猫」というキーワードを導き出すのだ。

 

あるいはそこからさらに発展させた「ペットホテル」や「動物病院」から、重要な映像に辿り着く可能性もあるだろう。例えば予約の時間によって、犯行時刻を推定できるかもしれない。

 

このように断片的な情報から仮説を立てて、推理をしていくのが本作の醍醐味だ。新しい取り調べ映像によって仮説が裏付けされた時には、言いようのない快感を得られるだろう。また正確な推理のためには前述した情報の取捨選択に加えて、時系列や登場人物の特徴、相関図を整理することも重要になる。ノートやパソコンのメモ帳を使って自分だけのデータベースを作るのも有効だ。

 

映画や小説、ノベルゲームでは得られない唯一無二の没入感

検索、取り調べ映像の確認、検索、取り調べ映像の確認、検索、確認……。合間にメモを取りながら、プレイヤーはひたすらこの作業を繰り返していく。そしてふとした瞬間に、今までに経験したことがないほどゲームに没入していることに気付くのだ。

 

「つまりこういう物語なのでは?いや、でもこの部分がこの発言と矛盾して……そうだ、今度はこの単語で検索してみよう」。ブラウン管モニターを前に、これまで得た情報をノートへとまとめる。ゲームのキャラクターを操作するのではなく、プレイヤー自身が当事者として物語を追いかけていく。彼女は何者なのか、物語の真相は……。

 

証拠集めやアーカイブといったわかりやすいシステムが存在しないからこそ、本作が与えてくれる推理体験はリアルかつ唯一無二のものとなっている。ミステリー映画や推理小説、ノベルゲームでは決して再現できないだろう。

 

物語の真相に近づいてから見直すと、違った印象を受ける取り調べ映像も。

 

本作においてなによりも素晴らしいのは、ゲームのテーマが徹頭徹尾「彼女の物語」からブレていない点だ。事件も取り調べもすでに終わっており、プレイヤーは自身の選択によって物語に影響を与えられない。許されているのは、映像を通して女性の物語を追体験することだけだ。

 

ある意味でアドベンチャーゲームにあるまじきシステムとも言えるが、ゲーム全体の完成度の高さは見事と言うよりほかはない。女性役であるViva Seifertの名演も相まって、「このシナリオ、このシステム以外考えられなかった」と思わされるほどの出来に仕上がっている。

 

このとおり『Her Story』は、廉価ながら極上の体験を提供してくれるタイトルだ。リプレイ性に欠けるのが玉に瑕だが、買って損することはありえないと断言できる。

 

少しでも気になった方はぜひ、自身の手で彼女の物語を解き明かしてみてほしい。クリアの暁には、言葉では言い表せない満足感に包まれること請け合いだ。

 

steam公式サイト

Steam:Her Story

 

Reported by 堀川 秋

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